第81章

ゴール地点に立っていた橋野悠希は、綾波道美をひょいと抱き上げた。二人の頬には、同じくらい弾けるような笑みが浮かんでいる。

「チッ……あれで長川貞也の気を引けると思ってるんじゃない?」

耳障りな声が飛んできた。嘲りを隠そうともしない。

「知らないの? 長川様はずっと女の影が薄かったの、義妹と――弟さんが残した子どもの面倒を見るためなんだって」

「結婚したときだって、橋野悠希は不倫相手だったじゃない。今さら運動会に一緒に来ないの、むしろ普通でしょ」

ひそひそとした囁きが重なり、聞いているだけで神経を逆撫でされた。

橋野悠希と長川貞也が夫婦だという話は、もともとこの界隈では周知の事実だ...

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