第95章

「ちょっとした小金だ。あいつが喜ぶなら、それでいい」

長川貞也は自分の「溺愛夫」という役回りにすぐ順応し、うなずいてカードを差し出した。

販売員は二人を見て、嬉しさで顔がほころびっぱなしだ。何度も頭を下げながら小走りで決済に向かい、次々と包んでいく。

ただ、最後に新作のバッグ数点の話になった瞬間、販売員の目にわずかな迷いが浮かんだ。

「こちらの数点は、まだ一般発売前でして……限られたルートで、内部のお客様へ先行でお出ししているものになります。どうか当面は、口外なさらないようお願いいたします」

言葉遣いはあくまで丁寧で、腰も低い。

これだけの買い物を即決できる客を、どんな立場の人間...

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