第286章

 そう言いながら、彼は脇にあったタバコの箱を手に取り、一本直接口にくわえると、ライターの火を点した。俯いて紫煙をくゆらせたかと思えば、ふと視線を上げ、正面の二人を見据える。その暗い瞳の奥には、狡猾で計算高い光が揺らめいていた。

 鈴木雲はその視線に気づかず、ただ水原玲の顔を覗き込み、無言で彼女の意思を問いかけた。

 一方、玲は気づいていた。だが、口は開かない。

 以前、石川秀樹が葉山グループとの関わりを禁じたのも、きっとこれが理由だ。葉山成井という男は、目的のためなら手段を選ばない。彼と手を組むなど、虎の尾を踏むようなもの。自分では到底太刀打ちできず、最後は骨の髄までしゃぶり尽くされる...

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