第303章

 水原玲が事態を飲み込むよりも早く、彼は軽々と彼女を抱き上げていた。

 部屋にいた全員が、その光景にカッと目を見開く。

 水原玲は瞬時に耳まで赤くなり、咄嗟に彼の胸をぽかりと叩いた。そして声を潜めて訴える。

「歩けますから、下ろしてください」

「子供たちの前だ。強がるな」

 彼に彼女を下ろす気配など微塵もない。

 水原玲は恥ずかしさのあまり、穴があったら入りたい気分だった。

 道中、すれ違う人々が驚きと羨望の入り混じった視線を投げかけてくる。

 好奇の目に晒されるのに耐えきれず、水原玲は石川秀樹のシャツの胸元をぎゅっと握りしめ、その懐に顔を埋めた。

 石川秀樹はそんな彼女を...

ログインして続きを読む