第306章

 石川秀樹は相変わらず彼を無視したままだ。

 ちょうど車が石川家のガレージに滑り込んだところだった。

 秀樹は車が止まるやいなや、さっさと降りて歩き出してしまった。

 渡辺勇介は呆気にとられ、助手席の斎藤恭介に顔を向けた。

「ボスはどういうつもりだ?」

「見ての通りですよ」

 斎藤は当たり前だと言わんばかりの涼しい顔で答える。この手の扱いには慣れっこなのだ。

「否定しねえってことは、認めたってことか?」

「そういうことになりますね」

 斎藤はやれやれと肩をすくめ、尋ねた。

「渡辺様、お送りしましょうか?」

「帰ってどうするんだよ? こんな状況で安心して寝られるか!」

...

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