第322章

「石川秀樹!」

彼女は呼び捨てでその名を叫んだ。

この男、まさか痴漢まがいのことをする気か?

彼女の顔はカッと熱くなり、まるで熟れきった林檎のように真っ赤に染まった。

石川秀樹はゆっくりと口角を上げ、不敵な笑みを浮かべる。この女、普段の氷のように冷ややかな表情よりも、こうして恥じらっている姿の方がよほど可愛い。

水原玲は彼に見つめられて居た堪れなくなり、その胸をドンと突き飛ばした。

「ちょっと、離れてよ」

だが、彼は退くどころか、逆に彼女の手を強く握りしめた。

折しも、電話を終えた椎名優羽が戻ってきた。

水原玲は慌てて手を引き抜く。

二人の間に漂うどこか艶めかしい空気を感...

ログインして続きを読む