第069章

水原心奈の顔色はさらに曇った。

他の者たちも皆、唖然としていた。この幼い娘は話せないのではなかったか?

では、今のは確かに話したということか?

その場にいた人々は顔を見合わせた。

この部屋の中で唯一嫌われていない人物がいるとすれば、それは石川里見だけだろう。水原家の兄妹には、彼が石川家の二人の小さな子を心から可愛がっていること、そして唯一の善良な人間であることが見て取れた。

だから水原家の兄妹は彼に懐き、その傍に歩み寄った。

石川里見は二人を左右に抱きしめ、慈愛に満ちた声で尋ねた。

「健太、香織、ちょうどよかった。じいじが今から注文するところだよ。何が好きか見てごらん」

水原...

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