第182章

渡辺美代は自分が借りたアパートに戻ると、おじいさんにビデオ通話をかけた。しばらく話をして、電話の向こうのおじいさんは機嫌が良さそうだった。

渡辺美代は罪悪感を覚えながら言った。

「おじいさん、私まだ風邪が治ってなくて、しばらくお見舞いに行けないわ。うつしちゃうから」

「馬鹿な子だね。おじいさんはここに付き添ってくれる人がたくさんいるから、そんなに気にしなくていいよ。早く自分の体を治しなさい」

病院では、おじいさんが壁際のスーツケースに目をやりながら尋ねた。

「君のスーツケースがここにあるけど、誰かに届けてもらった方がいい?」

渡辺美代はまだ自分が引っ越したことをおじいさんに伝えて...

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