第4章

渡辺美代はもう彼らにこれ以上しつこくされたくなかった。近所の人たちが興味津々にこちらを覗いているのが見えたからだ。ここは佐藤家の別荘であり、事を荒立てたくなかったので、重い防犯ドアを開けた。

渡辺美代は彼に一瞥もくれず、そのまま振り返ってソファに座った。まるで礼儀など気にしないかのように。

田中さんもこの夫婦が気に入らなかった。お茶どころか、水さえ出さず、まるで戦士のように渡辺美代のそばに立って、彼女を守っていた。

山本健一と中村奈美は田中さんに無視されたが、気にする様子もなく、堂々とソファに座り、目をキョロキョロさせて別荘の中を見回していた。そして心の中でこれらの装飾品の値段を見積もっていた。

やはり、佐藤家のような由緒ある家族は、新興の貴族とは違う。見た目は地味な装飾品でも、外の一軒家に匹敵する価値があるかもしれない。

欲望が明らかだった。

「今、話してもいいですか?」渡辺美代は不機嫌そうに尋ねた。

山本健一と中村奈美は何も言わず、田中さんに目配せをして、彼女に気を利かせて話を聞かないように示した。

この家では、田中さんは高橋隆一と渡辺美代の言うことしか聞かない。本当に渡辺美代を愛する両親なら、田中さんも誠意を持って接するだろうが、明らかにそうではない。田中さんは渡辺美代を一人でこの狼のような二人と対峙させるつもりはなかった。

渡辺美代が何も言わないので、田中さんも動かず、彼らの目配せを全く理解していないかのように振る舞った。

渡辺美代は微笑みを浮かべた。父親から感じたことのない保護されたのような温かさを、住み込みの家政婦から感じるとは思わなかった。

「田中おばさん、先に他のことをしていてください。私は大丈夫です」渡辺美代は穏やかに微笑んだ。その笑顔は春風のように心地よく、田中さんも一瞬見とれてしまった。こんなに素晴らしい娘は、どうしてこの二人が大切にしないのだろうか。

田中さんが去った後、ソファに残った三人はもう笑顔を保つ必要はなかった。同時に冷たい表情に変わった。

「ブレスレットを返して」渡辺美代は単刀直入に言った。

「美代ちゃん、焦らないで。おばさんはきっとブレスレットを返すけど、今はまだよ」中村奈美は長々と話そうとしたが、渡辺美代はすぐに手を挙げて止めた。

「無駄話はやめて、直接言って」

「何て態度だ。これはお前の継母だぞ。母親と呼ばないのはともかく、そんな口ぶりなんて、しつけがなってないな」山本健一が犬のように吠えた。

渡辺美代は眉をひそめた。

「しつけがなってない?どうせ私は母親に育てられた野良犬だもの」

山本健一は渡辺美代が自分を罵るとは思わず、一瞬言葉を失った。

渡辺美代が強気であることを見て、中村奈美も面倒くさくなり、直接本音を言った。

「高橋隆一と離婚して、そして妹を邪魔しないと、このブレスレットをあげるわ」

一言だけ、突っ込みどころが多すぎて、渡辺美代はどこから突っ込んでいいのかわからなかった。

「このブレスレットはもともと私の母のものよ。それを返すのは当然のこと。何が『あげる』よ?あなたは何様なの?」

山本健一と中村奈美は、ブレスレットを持ち出せばこの件は確実に解決すると思っていたが、今の渡辺美代がこんなに強気になるとは思わなかった。

彼らの記憶の中の渡辺美代は、屈辱に耐え、黙っている中学生のままだった。

「わかった、わかった、ごめんね。美代ちゃん、おばさんが言い過ぎたわ」中村奈美はもう一度言い直した。「奥さんを邪魔しないと、このブレスレットを返すわ、いい?」

渡辺美代は冷たく笑った。

「面白いわね。奥さんを邪魔しないってどういう意味?高橋隆一が元々彼女の夫だったなんて聞いたことないわ。彼女が以前結婚していたなんて知らなかったわ。二度目の結婚なの?」

「違う、違う、彼女はまだ恋愛もしていないのに、何が二度目の結婚よ」

中村奈美は焦った。彼女は山本美咲を佐藤家に嫁がせたいと思っていたので、渡辺美代に名誉を傷つけられたくなかった。

渡辺美代はすぐに謝るふりをした。

「ごめんなさい、ごめんなさい、私が間違ってたわ。二度目の結婚じゃなくて、愛人ね」

中村奈美は生涯で一番嫌いな言葉が「愛人」だった。なぜなら彼女自身がそうだったからだ。

「おばさん、私は山本美咲のことを言っているのに、どうしてそんなに興奮するの?」

「私の娘のこともダメよ!」

「どうしてダメなの?後ろめたいの?」

「渡辺美代、そんな無駄話はやめて、一つだけ聞くわ。高橋隆一と離婚する気はあるの?」

「いいわよ」渡辺美代はあっさりと答えたが、山本健一と中村奈美は驚いた。彼らは渡辺美代がこんな簡単に同意するとは思っていなかった。

渡辺美代は気にしていなかった。どうせ高橋隆一はすでに離婚を申し出ていたのだから、どうしても離婚するのだ。山本健一と中村奈美から何かを引き出す方が得策だ。

「離婚に同意するわ。だから、何を補償してくれるの?」

山本健一はすぐに笑顔を浮かべた。

「ブレスレットをあげるって言ったじゃん」

「ブレスレットだけで交換するの?高橋隆一がそんなに安いものだったの?」

「じゃあ、何が欲しいんだ?」山本健一は仕方なく尋ねた。ブレスレット一つで渡辺美代を離婚させるのは、誰もが納得しない取引だ。

「高島の別荘が欲しい」

「何?それはダメだ!あの別荘は美咲の名義になっているんだ。彼女の財産を渡すなんて無理だ!」

「山本美咲の財産?それは私の母の財産だ。どうして彼女に渡すの?」

高島の別荘は長い間彼らの手にあったので、中村奈美さえそれが渡辺美代の母の財産であることを忘れていた。だから渡辺美代が突然それを言い出したとき、彼女は激しく反応した。しかし、その別荘は非常に価値が高く、山本健一も中村奈美も渡辺美代に返すつもりはなかった。

「同意しないならいいわ。私は離婚する必要はない。佐藤家の奥様でいる限り、高島の別荘のような場所なら、いくらでも買えるわ」

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