第40章

「ごめんなさい、山本さん、私が前を見ていませんでした」

中村政がぶつかった相手はなんと山本美咲だった。幸いにも中村政の力はそれほど強くなく、山本美咲は少しよろけただけで倒れはしなかった。

彼女は気にせず、甘い声で「隆一」と呼びかけ、中村政を越えて高橋隆一の腕に抱かれている渡辺美代を見つけた。その瞬間、彼女の目は陰りを帯びた。

この女がどうして隆一のオフィスにいるの?

何を企んでいるの?

山本美咲は渡辺美代を見なかったかのように、ただ高橋隆一に甘い声で話しかけた。「隆一、今日は私の誕生日だから、誕生日パーティーを開こうと思うんだけど、どう思う?」

「いいよ」

「帰国したばかりで、...

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