第51章

高橋隆一は突然顔を上げ、渡辺美代は驚いて身を震わせた。

「昨日、展示会に行ったのか？」

渡辺美代は無言でうな頷いた。「藤原樹が良い宝石があると言っていたので、好奇心から見に行ったのだ」

高橋隆一は眉間を揉みながら、また藤原樹か、と呟いた。

「普通の友達を作れないのか？」

彼の言葉に、渡辺美代の緊張が一気に解けた。彼は他のことには触れず、いつものように藤原樹との付き合いを嫌がっているだけだった。

つまり、彼はまだその方面には気づいていない。自分の秘密はまだ守られている。

渡辺美代は狐のような目を細めて笑った。「私たちはみんな普通の人間よ。高橋社長こそ、自分を見つめ直したら？」

...