第65章

渡辺美代は全く怖がっていなかった。高橋隆一がどんな人物か知っているからだ。彼なら、あのメディア会社を一瞬で解散させることができる。この連中が彼に向かって無遠慮に写真を撮るなんて、社会の厳しさをまだ知らないのだろう。

話しながら部屋の前に到着した。高橋隆一はドアプレートを確認し、昨日井上雄太を送った部屋だと気づいた。昨日、井上雄太を部屋に入れた後、確かに鍵をかけたことを覚えている。

高橋春香は渡辺美代を睨みつけ、高橋隆一に向かって弱々しく「お兄ちゃん」と呼んだ。

高橋隆一は今、彼女に構う暇はなかった。記者たちがまだ彼の顔にカメラを向けていたからだ。

彼は近くの記者の胸にかかっている名札...

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