第11章 飼い犬を叩くにも主人を見よ

小野雨音があの暗闇の底から引き上げてくれなければ、藤原由真は今ごろ野垂れ死にして、誰にも見つからず腐っていたかもしれない。

まして、家族の仇を討つ余力など残っているはずがない。

そう思うほど、由真の胸に湧くのは感謝だった。彼は迷わず電話をかける。

呼び出しの向こうから、雨音の柔らかな声がした。

「由真、どうしたの?」

「声が聞きたくなった」

低く、耳に絡むような声。精神が揺らぐとき、雨音の声を聞くだけで、由真は不思議と冷静さを取り戻せた。

「私も……会いたい」

雨音はそう言いながら、ふと森川汐里のことが頭をよぎり、探るように口を開く。

「……お姉ちゃん、最近は家で大丈夫?」...

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