第129章 プロポーズ

同時に、森川汐里の胸の奥にも、どうしようもない寂しさが沈んでいた。

彼女は残酷な人間ではない。むしろ昔から情に脆い。だからこそ、藤原由真にあそこまで追い詰められて、死にかけるほどの目に遭っても、まともに反抗できなかったのだ。

過去の情が邪魔をして、どうしても彼に手を下せない。

けれど――この男のやることなすこと、何度だって反吐が出る。

怒りで全身を震わせる男を前にしても、森川汐里は、表面ほど愉快な気分ではなかった。

それでも、まだ帰ろうとしないのを見て、彼女は紅い唇をつり上げ、嘲るように笑う。

「なに? まだ帰らないの。引っ越し、手伝ってくれるつもり?」

藤原由真の瞳孔が揺れ、...

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