第166章 職権を乱用する

小野雨音は、唐突に背筋が凍るような感覚に襲われた。

――もう、手の届く範囲で起きている話じゃない。

事態は彼女の制御をすり抜け、藤原由真は完全に掌から滑り落ちている。今すぐあの男に会わなければ、冷静に考えることすらできない。胸の奥で、ざわりと恐怖が膨らんだ。

けれど、どれだけ祈るように頼んでも、彼は頑なに会おうとしない。

病状を理由に持ち出しても、藤原由真は微動だにしなかった。

「俺は最近、調子がいい。カウンセリングも必要ない。それに忙しいんだ。しばらく連絡はしないでくれ。用があるなら木下直人に言え。あいつに処理させる」

有無を言わせない声。冷静で落ち着いているのに、どこか苛立ち...

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