第17章 子どものために

若いメイドの足音が遠ざかり、地下室はようやく闇に沈んだ。

藤原由真はベッドの上の女を見下ろし、長い息を吐く。

さっきまでの騒ぎを、もう思い返したくなかった。思い出すたび、頭の芯を針で突かれるみたいに痛む。

それでも――森川汐里がこうして静かに眠っているだけで、胸のざわつきは少しだけ引いていった。

ただ、黙っている彼女はやはり生気がない。しばらく眺めても何がどうというわけでもなく、代わりに浮かんできたのは、森川汐里が九条千秋との子どものために必死になっていた姿ばかりだった。

由真は苛立つように立ち上がり、踵を返して地下室を出た。

――俺は、さっき何をしていた?

どうしてわざわざ地...

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