第62章 子育てを始める

海外の株主たちが彼女に大きな期待を寄せ、破格の高待遇まで提示してこなければ――彼女が戻ってくることは、まずなかった。

もっとも、彼女自身もここで長く働くつもりはない。こちらの用事を片づけ次第、できるだけ早く子どもたちを連れて、また海外へ出る。それだけだ。

「……お疲れさま」

電話越しの森川汐里の声を聞きながら、九条千秋はスマホを握りしめた。胸の奥がむず痒い。何度聞いても、聞き足りない。だから、つい話題を探してしまう。

「子どもたちはどう? 仕事もしながら育児もしているなんて……一人で回せてる?」

森川汐里は一拍置いてから答えた。

「うん、大丈夫。悦子も湊も聞き分けがいいから、そこ...

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