第64章 真剣さが足りないな

だが彼はそれ以上は何も言わず、くるりと踵を返して、そのまま立ち去ろうとした。

木下直人の横を通り過ぎるとき、彼はポケットからキャッシュカードを一枚取り出し、九条千秋の手に押しつける。

九条千秋はちらりと一瞥しただけで、すぐに視線を引いた。

「藤原社長の金なんて、怖くて受け取れませんよ。夜までに、さっきまでの患者に魂を取り立てられそうだ」

吐き捨てるように言って、鼻で笑い、軽蔑を滲ませたまま去っていった。

椅子に座った藤原由真は、顔を陰らせる。今の言葉は、さすがに刺さった。

けれど森川汐里のことを思い出すと、胸の奥で燃えていた怒りはすっと薄れ、代わりに罪悪感がじわりと広がった。

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