第76章 彼女を想う

男は顔を歪め、唇をきつく結んだ。

それでも九条千秋は容赦しない。冷えた笑みを浮かべて言い放つ。

「お前が、自分の手で彼女を殺したんだ。お前が――殺したんだよ」

「もう一人、罪のない馬鹿な女が、お前のせいで死んだ。まだ他の無関係な人間まで巻き込むつもり?」

九条千秋は虫でも見るように男を一瞥し、踵を返した。

こんな恥知らずとこれ以上言い争う気にもなれない。まして、このみじめな姿のまま森川汐里の前に出るなんて、なおさらだ。男はそのまま住宅団地を出た。

夜はすっかり濃く、灯っているのはまばらな街灯だけ。

男は街灯の下にぽつんと立ち、森川汐里の家がある方角を見つめた。

唇の端の血を拭...

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