第82章 契約を勝ち取る

森川汐里は思わず舌を巻いた。

自分ですら、ぽろりと漏らしてしまう。

――演技、うますぎ。

そりゃ当時、勝てるわけがない。

今の自分だって、小野雨音の芝居には敵わないだろう。

汐里はまぶたを伏せ、瞳の奥に渦巻く嫌悪と、掘り返された痛い記憶をそっと押し込めた。

藤原由真は困ったように眉を下げる。

男としての情など、雨音に対しては欠片もない。

それでも、恩があるのは事実だ。こんな姿を見せられて平気でいられるほど、彼は冷たくなりきれていなかった。

「雨音……」

言葉が続かない。どう慰めればいいのか分からないまま、しばらく沈黙して――ようやく絞り出した。

「……とりあえず飯にしよ...

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