第86章 事件を起こした

現場の区画をひと通り確認し、会社へ戻ってようやく席に腰を下ろした――その瞬間だった。息をつく間もない。

目の前に、すっと影が落ちる。

続けて、耳をつんざく怒鳴り声。

「Giya! お前、何してくれたんだ! 全部台無しじゃねえか! 俺を殺す気か!」

森川汐里はきょとんと顔を上げた。そこにいたのは、副社長。ぽっこり出た腹を突き出して、顔を真っ赤にして首筋まで怒りで膨れ上がっている。

――また何の癇癪よ。

そう思いながらも、胸の奥がざわついた。何かがおかしい。

「……どういう意味ですか」

淡々と返しただけで、副社長の顔色が鉄みたいに沈む。

「意味だと? こっちが聞きてえよ! こん...

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