第9章 不倫

病室へ戻り、傍らの藤原由真の優しい目元を見つめても、小野雨音の指先は勝手に強張り、ぎゅっと握りしめてしまう。

まさか、森川汐里というクズが、こんなに早く妊娠するなんて。

他人の子だと疑うならまだいい。雨音がいちばん耐えられないのは、藤原由真の血を引く子を宿した可能性だった。

――森川汐里みたいな汚い女が、由真お兄ちゃんの子を?

その黒い感情を胸の奥へ押し込み、雨音は柔らかく彼を見上げる。

藤原由真が、くしゃりと彼女の頭を撫でた。

「どうした?」

雨音はぱちぱちと瞬きを二度して、遠慮がちに言う。

「由真、さっき……お姉ちゃんと何を話してたの? 私、急に来ちゃったから、邪魔しちゃ...

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