第100章

鶴田詠子が立ち去るのを見届けると、早乙女珠妃の視線は河内景丞へと移った。

河内景丞の顔色は瞬く間に土気色に変わり、額からは玉のような脂汗が止めどなく滴り落ちている。

「さ……早乙女さん、私が愚かでした。どうか、どうかお許しを……」

河内景丞はそう言うや否や、膝から崩れ落ちそうになるのを必死で堪えていた。

彼がこれほどまでに怯えるのも無理はない。「帝大」といえば、国内最高峰の教育機関であり、学術界の頂点に君臨する存在だ。もしここを懲戒解雇などされれば、他のどの大学も彼を受け入れることはないだろう。

帝大ほどの厚遇を得られる職場など、二度と見つかるはずもないのだ。

家族のため、そして...

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