第146章

車内では、コーエンがしきりに早乙女珠妃の方を盗み見ていた。その視線に気づいた珠妃は、冷ややかな声で問いただす。

「何よ?」

コーエンは慌てて視線を戻すと、茶化すような笑みを浮かべた。

「珠妃、もしかして失恋でもした?」

珠妃は一瞬呆気にとられ、自分の頬を無意識にさすった。

「嘘……そんなに顔に出てる?」

その反応を見るや否や、コーエンは素っ頓狂な声を上げた。

「やっぱり失恋だ! オーマイゴッド! どこの節穴野郎だい? 君を振るなんて信じられない!」

珠妃は黙り込んだ。単なる失恋どころか、婚家から追い出されたなどと知れたら、この大袈裟な男がどんな悲鳴を上げるか分かったものではな...

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