第170章

「誰かある! 雪音を連れてきな!」

 土井千影がヒステリックに叫ぶと、すぐに使用人が清野雪音の部屋へと走った。しかし、戻ってきた使用人の顔色は芳しくない。

「奥様、清野様はお部屋にいらっしゃいません」

 その報告を聞くや否や、土井千影は会社へと電話をかけた。

 受話器越しにもたらされたのは、清野雪音が本日、ミラノへ向けて飛び立ったという事実だった。

 瞬間、土井千影の頭の中で何かが切れた。

「あのクズ……いい度胸だね。私に隠れてこそこそと逃げ出すとは!」

 土井千影は怒りのあまり、血管が破裂しそうだった。

 あらゆる計算を巡らせていたが、まさかあのクズが自分の命令に背くなどと...

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