第175章

耳元で天宮徳臣の、どこか拗ねたような、それでいて恐る恐る触れるような声がした。早乙女珠妃の胸に、ささやかな波紋が広がる。

「天宮徳臣、あなたはいい人……」

早乙女珠妃がそう言いかけた瞬間、天宮徳臣が彼女の口を手で塞ぎ、ゆっくりと顔を上げて視線を絡ませた。

「『いい人』なんて真っ平御免だ。俺はただ、お前の男になりたい。今すぐじゃなくてもいい。だが早乙女珠妃、もしお前が疲れて、羽を休めたくなった時……背後にはいつだって俺がいることを忘れないでくれ」

「なあ、珠妃。知っているか? お前がいなくなってから、俺はろくに眠れもしない。毎晩、お前のことばかり考えているんだ」

「早乙女珠妃、俺はお...

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