第257章

天宮徳臣の言葉に、早乙女珠妃は苦笑交じりの溜息を漏らす。

「全部、見ていたの?」

天宮徳臣は頷いた。

「ああ。朝一番に会いに行こうと思ったんだが、会社に着くなり君たちが一緒に出ていくのが見えてな。嫉妬に狂いそうだったが、邪魔はすまいと必死に耐えたんだ。……珠妃、その分の埋め合わせはしてくれるんだろうな?」

その子供じみた言い草に、早乙女珠妃は堪えきれず吹き出した。

「分かったわ、ご褒美をあげる」

そう言って歩み寄ると、彼女は徳臣の頭を優しく胸に抱き寄せた。

徳臣の体が強張る。だがすぐに、彼は反動をつけるように珠妃の体を力強く抱き締め返した。

予想外の行動だったが、珠妃からの能...

ログインして続きを読む