第260章

早乙女珠妃の言葉は、天宮徳臣を有頂天にさせた。

昨日の言葉を彼女が覚えていたことが、彼には思いがけない喜びだったのだ。

その上機嫌ぶりは、すれ違う社員たちの目にも明らかだった。

隣のオフィスでは、寄り添って去っていく早乙女珠妃と天宮徳臣を見送りながら、佐川青子が清野雪音に向かって皮肉交じりに声をかけた。

「清野さん、早乙女さんと天宮社長、ずいぶんと熱々じゃない。見に行かないの?」

意外なことに、清野雪音は怒りもしなかった。

手元の仕事から顔も上げずに、淡々と答える。

「もう見たわよ。佐川さんが見たいなら、好きなだけ見てればいいじゃない」

「どういう意味?」

佐川青子は清野雪...

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