第265章

早乙女正徳が生きているのか死んでいるのか、早乙女珠妃には知る由もなかった。

彼女は早乙女家を後にすると、そのまま山水居へと戻った。

出迎えてくれたのは見慣れた室内の調度品だった。部屋に入ると、使用人がすぐに靴を履き替えさせ、温かいお茶を淹れてくれる。

熱い茶が喉を通ると、珠妃はようやく生き返ったような心地がした。

珠妃はソファに気だるげに横たわっていた。微睡みの中に落ちていきそうなその時、鼻先に芳しい香りが漂ってくる。

薄目を開けると、そこには天宮徳臣が薔薇の花束を抱えて立っていた。

その瞬間、珠妃の眠気は霧散した。彼女は驚きと喜びで身を起こし、花を受け取って深く香りを吸い込む。...

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