第296章

川元一泉はその言葉にぎょっとして、危うくハンドルを切り損ねそうになった。

彼は驚きを隠せないまま、確認するように問い返す。

「坊ちゃん、ミラノへ行かれるのですか?」

「ああ」

天宮徳臣の明確な返答を聞き、川元の胸に熱いものが込み上げた。

ついに、坊ちゃんは若奥様を迎えに行くと決心されたのだ。

神のみぞ知るだ。この数年、坊ちゃんがどれほどの想いを押し殺して耐え忍んできたか。

ようやく、暗雲が晴れる時が来たのか。

先ほど、白井秋叶の母娘から何を聞かされたのかは知る由もないが、それが吉報であることは間違いない。

坊ちゃんが過去の呪縛から解き放たれ、前を向いて歩き出せたこと、それだ...

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