第65章

清野雪音は部屋に入るなり、目に涙を浮かべて早乙女珠妃のもとへ駆け寄った。

「早乙女さん、ご無事ですか? 鈴本部長のこと、聞きました。全部私のせいです……私が食事に誘わなければ、こんなことには……」

清野雪音は罪悪感に顔を歪め、瞳の涙は今にもこぼれ落ちそうだ。その姿は、これ以上ないほど哀れを誘うものだった。

もし早乙女珠妃自身が被害者でなければ、この迫真の演技にコロリと騙されていたかもしれない。

「泣き真似は済んだ?」

清野雪音は一瞬呆気にとられたが、慌てて涙を拭い、おずおずと尋ねた。

「まだ、怒っていますか?」

「怒ってなどいないわ。ただ考えていただけよ。この薬、誰が鈴本部長に...

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