第93章

窓の外、薔薇の茂みの陰から、清野雪音は二人を食い入るように見つめていた。

誰にも気づかれていない。

睦まじげに寄り添う二人の姿に、雪音の爪が肉に食い込む。瞳には憎悪の炎が燃え盛っていたが、誰かが近づく気配を感じ、彼女は慌ててその場を立ち去った。

数歩も行かないうちに、携帯電話が鳴り響く。

画面に表示されたのは見知らぬ番号だった。無視しようとしたが、着信音は執拗に鳴り止まない。

観念して通話ボタンを押すと、受話器の向こうから清野山吾のしわがれた声が聞こえてきた。

「雪音ぇ、また月が変わったぞ。金の方はどうなってんだ?」

その声を聞いた瞬間、雪音の心臓は巨大な手で鷲掴みにされたかの...

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