第6章

「卯月雫」が私のブランドネームになった。夏川雫ではミステリアスさに欠ける。でも「卯月雫」には――魔法のような響きがあった。

伊吹道子さんが私に与えてくれたもの――なりたい自分になる力――を、他の人にも与えられる、そんな気がした。

ブランドとの提携話は、すぐに舞い込んできた。最初は無料の商品を送ってくる中小企業から、やがてはちゃんとした契約金を提示してくる大手ブランドまで。大学三年になる頃には、SNSでの収入は、同世代の社会人が本業で稼ぐ額をはるかに上回っていた。

「美は、誰にでも開かれている」が、私の信条になった。私はただ傷跡を隠すだけじゃなかった。あざ、ニキビ跡、白斑――人と...

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