第6章
「卯月雫」が私のブランドネームになった。夏川雫ではミステリアスさに欠ける。でも「卯月雫」には――魔法のような響きがあった。
伊吹道子さんが私に与えてくれたもの――なりたい自分になる力――を、他の人にも与えられる、そんな気がした。
ブランドとの提携話は、すぐに舞い込んできた。最初は無料の商品を送ってくる中小企業から、やがてはちゃんとした契約金を提示してくる大手ブランドまで。大学三年になる頃には、SNSでの収入は、同世代の社会人が本業で稼ぐ額をはるかに上回っていた。
「美は、誰にでも開かれている」が、私の信条になった。私はただ傷跡を隠すだけじゃなかった。あざ、ニキビ跡、白斑――人と...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
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