第112章 秘密

「ただの商業投資よ」

桜井結衣は表情一つ変えず、用意していた模範解答を返した。

「向こうの伸びしろに賭けただけ。将来性があると思ったの」

「ただの、ねえ」

黒崎理人が鼻で笑う。ノートPCを閉じて机に置き、椅子から立ち上がると、また結衣へ歩み寄ってきた。

「割高で買ってまで『将来性』? その口上、黒崎明信なら騙せるかもしれないが、俺には通じない」

目の前で止まる。今回は身体で押し潰すような真似はしない。代わりに、指を一本だけ伸ばした。

肘から手首へ。露わな腕の肌を、羽で撫でるみたいに――ゆっくり、やけに丁寧に。

ぞわり、と。

結衣の腕に細かな震えが走り、心拍が一拍だけ乱れる。...

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