第116章 黒崎家の足元をすくう

翌朝――。

桜井結衣はいつも通り、まだ空が淡い時間に目を覚ました。

昨夜の晩餐会の醜態も喧噪も、まるで前世の夢だ。自分の上に、何ひとつ痕跡を残していない。

起きて最初にやったのは、「アテナ」の監視アルゴリズムの更新だった。

新しい指示のもとで、システムは単なる記録と異常値のタグ付けをやめ、複数軸の相関解析へ移行する。

隣室から届く生体指標の揺らぎは即座に、黒崎家本邸の内外警備ログ、来客履歴、さらには自分の行動予定とまで突き合わせられ、交差照合される――逃げ場のない網だ。

午前の定期チェック。

桜井結衣はカルテボードを手に、時間ぴったりに黒崎理人の部屋へ入った。

室内はいつも通...

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