第117章 悪意を秘める

午前3時。街は、いちばん深い夢の底に沈んでいた。

桜井結衣は、黒崎理人の部屋に繋いでいたリアルタイム監視のグラフを閉じる。

――仮面が剥がれた患者は、この先どう演じるつもりだろう。

そう考えかけた瞬間、暗号回線専用の着信音が夜の静寂を裂いた。甲高く、せわしない。

画面に跳ねた名前は結城南。

この時間の電話が、良い知らせであるはずがない。

結衣は通話を取ったが、あえて何も言わない。相手が状況を吐き出すのを待つ。

「結衣! 大変……!」

結城南の声は震えを押し殺しきれていない。向こう側では人の怒鳴り声と、耳障りな警報が混ざり合っていた。

「研究所……うちのコアデータベースが攻撃...

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