第120章 協力はまだ始まったばかり

その日の夕方、桜井結衣のスマホに黒崎祁からメッセージが入った。

『祝杯でもどうだ? 城南のあの店、席を取っておいた』

危機を見事に収めた彼女を祝う――理由としては、いかにも立派だ。

桜井結衣は画面を見つめ、指先を数秒止めてから短く返した。

『うん』

城南の店は、ひっそりした竹林の奥に紛れるように建っている。場所を知っているのは、ほとんど常連だけだ。

桜井結衣が着いた時には、黒崎祁はすでに窓際の席に座っていた。俯いて茶を淹れている。手首のパテック・フィリップの星空を映す時計が、暖色の灯りを受けて幽かな蒼を返した。

「おめでとう。一石三鳥だな」

黒崎祁は淹れたての大紅袍を、すっと...

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