第176章 すべては言わずとも伝わる

「手付金も残金も、アルペン銀行の暗号化口座から同一ルートで送金されている。口座の実質的な支配者を辿ると、カル・グループのユーロピア本部にいる副社長——イレーナの腹心に行き着く」

黒崎理人は二、三言で、証拠の連なりを過不足なく描ききった。筋道は明快で、余計な言葉が一つもない。

「イレーナ夫人、今回のやり方はさすがに品がないな」

声には薄い嘲りが滲む。

「まさか、金で動く傭兵どもがあそこまで骨抜きだとは思わなかったんだろ」

桜井結衣は知っている。骨が柔らかいんじゃない。黒崎理人の手が硬いのだ。

音声の中、強盗団の頭目が震える声で漏らした恐怖は、ただの取り調べ程度で引き出せる類いではな...

ログインして続きを読む