第27章 自ら深浅を探ってみる

黒崎邸、書斎。

橘敏恵は、炊きたての燕窩を一椀手に、しとやかな笑みを貼りつけたまま足音を殺して入ってきた。

「お義父さま、こんな遅くまで読書ですか」

黒崎亮二は顔も上げず、淡々と「……ああ」とだけ返す。

橘敏恵は、わざとらしくない程度に息を吐いた。眉間に、ほどよい憂いが滲む。

「お義父さま、ひとつ……言うべきか迷っていることがあるんです」

亮二はようやく書類から手を離し、眼鏡を外した。

「言いたいなら言え」

「桜井結衣さんのことです」

年長者らしい心配を装った声。丁寧で、柔らかい。

「結衣さん、数日前に……100億も使ったそうで。田舎から来た若い子ですし、何か変な道に足を...

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