第78章 桜井さんは人手不足ですか

桜井智也は妹を宥める気など、とっくに失っていた。視線だけが人混みを切り裂くように泳ぐ。黒服のボディガードに囲まれ、K氏が会場を後にしようとしているのを見つけた瞬間、智也は反射的にネクタイと襟元を整え、ビジネス用の最上級の笑みを貼りつけて、足早に追いすがった。

「K先生、少々お待ちください」

ボディガードが条件反射で前へ出る。だが銀の仮面の男が、わずかに手を上げただけで――彼らは無言のまま引いた。

智也の胸が弾む。好機だ。彼は慌てて名刺を差し出し、へりくだりながらも熱を込めた。

「はじめまして。桜井グループ社長、桜井智也と申します。弊社はバイオ医薬分野で長年培ってきた基盤があり、供給か...

ログインして続きを読む