第85章 あなたの再起を助ける

桜井結衣の口元が、ほんの僅かに吊り上がった。

この結末は、最初から想定内だ。

桜井美桜が盗んだのは、彼女が実験初期に生み出した失敗作の一つに過ぎない。

あのレシピは、一見すると神経を素早く覚醒させるように見える。だが実際は脳幹に不可逆の損傷を残す――渇きを癒すために毒を飲むような、紛いものの“科学”だった。

あえてデータを残したのも、そのため。

欲に目が眩んだ桜井美桜という魚が、自分から針を呑みに来るのを待っていた。

「ニュース見たよ」

電話口の結城南は、さっきより少し落ち着いた声になっていたが、興奮はまだ抜けない。

「桜井グループの株価、寄り付き前から崖みたいに落ちてる。提...

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