第87章 面の皮は本当にいいものだが、残念ながら彼女にはない

彼は乾いた笑いで場を取り繕いながら、華原悠に目配せした。今にも崩れ落ちそうな桜井美桜を、さっさと連れていけ――と。

華原悠も腰が抜けたようになり、慌てて魂の抜けた桜井美桜を支える。周囲の蔑みと「もっとやれ」という野次馬の視線を浴びながら、二人はみっともなく人混みに紛れ込んでいった。

騒ぎは尻すぼみのまま、あっけなく終わる。

桜井結衣は最初から最後まで、表情をほとんど崩さなかった。

まだ怒りが収まらない結城南の手を引き、机に叩きつけられていた資料を拾い上げると、そのまま自分のラボへ向かう。

「……あんなクズのために腹立てても、時間の無駄」

桜井結衣と結城南が群衆を抜けかけた、その背...

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