第93章 人は助け戻された

ベッドの上で規則正しく呼吸している男を一瞥し、結衣は複雑な目をした。

助けたのは、今はまだ死なせるわけにいかないから。

この人は――人を喰らう黒崎家の中で、彼女が唯一「盾」として使える存在だった。

「未亡人になりたくない」という言葉だって、全部が嘘というわけじゃない。

桜井結衣の男は、死ぬとしても結衣の手の内で死ぬべきだ。ほかの誰にも触らせない。

結衣は扉へ向かい、ドアノブをひねった。

「ギィ――」

廊下にいた全員の視線が、一瞬で結衣に突き刺さる。

橘敏恵が結衣の肩越しに中を覗き込もうとして、切羽詰まった声を上げた。

「理人はどうなったの? あなた、理人に何をしたの?」

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