第98章 師は何者だ?

フロントの女性も、さっと血の気が引いた。

目の前にいるのは「寰宇設計」の屋台骨――国宝級と称される建築設計の巨匠、小谷孝宏だ。

気難しいことで有名で、ここ5年は自ら案件を受けていない。今日こうして茨田将范に会うだけでも、破格の厚意だった。

小谷孝宏は茨田将范には一瞥もくれない。

視線が落ちたのは、ローテーブルに広げられた一枚の図面だった。

たった一目で、足が止まる。

近づき、明らかに手描きの図面を手に取る。最初は漫然としていた目が、次第に研ぎ澄まされ――やがて、息を呑むほどの衝撃に変わった。

「……これ、お前が描いたのか?」

小谷孝宏が顔を上げ、初めて真正面から桜井結衣を見た...

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