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新谷結奈が何か言った気がしたが、藤井翼には聞き取れなかった。

彼は一歩前に出て、ポケットからティッシュを取り出す。

「そんなに感動したの? また泣いてるじゃないか」

新谷結奈はティッシュを受け取り、そっと涙の跡を拭った。

「感動しないわけないでしょ。いきなり『三年後にここで家を買えてなかったら、ビル一棟あげる』なんて言われたんだよ?」

「この辺のマンションだって一戸で何千万もするのに、ビル一棟って……それ、何十億?」

彼女は小さく舌を巻き、ぼそぼそと頭の中で計算する。

そして、ずる賢いのに愛嬌のある笑みを浮かべ、軽い調子で言い切った。

「じゃあ私、努力やめよ。翼さんのビル、座...

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