第11章 誰が朝霧和音か

次に目覚めた時、朝霧和音は社員寮の鉄製ベッドに横たわっていた。

傍らでは藤村静香が彼女のために薬を水に溶かしている。

「ありがとう」

朝霧和音はゆっくりと身を起こし、礼を言うと、何かを思い出したように申し訳なさそうな顔になった。

「静香さん、ごめんなさい。あの時、少し怖くなってしまって、もう少しであなたまで……」

「辰さんは、あなたに何もしなかった?」

あの時、彼女は階上へ連れて行かれ、藤村静香の状況を気にかける余裕など全くなかった。

今になって思い出し、じわじわと恐怖がこみ上げてくる。

藤村静香が溶かし終えた薬を持ってきてくれた。

「いいのよ。どうせ私たちみたい...

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