第13章 明知故問

昼近くになって、朝霧和音はようやく社員寮の下までたどり着いた。

ほっと息をつこうとした矢先、ふと道端に停まっている車が目に入る。

昨夜見た、桐生瑛の車だった。

どうして彼がここに?

この二日間のあれこれを思い出し、朝霧和音は本能的に後ずさり、身を翻してその場を去ろうとした。

だが、まだ体に傷を負っており、いくら懸命に歩こうとしても、足は速くならない。

「桐生家の若君、朝霧さんが戻られました!」

背後から、高峯遼が桐生瑛に恭しく報告する声が聞こえた。

その声に、朝霧和音は痛みも構わず、壁に手をついて必死に足を動かす。

絶対に桐生瑛の手に落ちるわけにはいかない……...

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