第15章 桐生瑛、痛い

「桐生瑛、何するの? 離して!」

スイートルームのドアが勢いよく押し開けられ、朝霧和音はよろめきながら中に引きずり込まれた。

脳内で警報が鳴り響き、彼女は必死にもがいて振り向き、逃げ出そうとする。

次の瞬間、背後のドアがバタンと閉まった。

彼女の手を掴んでいた桐生瑛の力が、ふっと抜ける。

朝霧和音は不意を突かれて床に尻餅をついたが、それでも最初の反応は振り返ってドアを開けようとすることだった。

目の前の男は、あまりにも危険すぎる。

彼の与える苦痛には、もう耐えられない。

「逃げる気か?」

仕立ての良いスラックスの脚が、彼女の前に立ちはだかった。

桐生瑛は彼女の前にしゃがみ込...

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