第17章 どうして装わなくなった

外からドアが閉まる音がした。

部屋の中、とっくに目を覚ましていた朝霧和音は、長く息を吐き出した。

先ほど目が覚めた時、外から桜庭依々の声が聞こえてきて、一瞬悪夢でも見ているのかと思った。自分の腕を強くつねり、痛みを感じて、ようやく自分が本当に目を覚ましているのだと確認できた。

同時に、桜庭依々は確かにドア一枚隔てた場所にいるのだということも。

彼女は桜庭依々が、子供の頃に桐生瑛を助けたことがあるのだと話すのを聞き、心の中でようやく合点がいった。

どうりで、以前あれほど桐生瑛を追いかけても、彼は見向きもしてくれなかったわけだ。

原来、二人の間にはそんな縁があったのだ。

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