第18章 本当に彼女だ

ホテルの廊下は静まり返っていた。

朝霧和音は、自身の荒い呼吸音さえはっきりと聞き取ることができた。

いつ桐生瑛に逃げ出したことがバレるかわからず、道中一度も足を止めることができなかった。

三十階もの高さを、朝霧和音は一息に駆け下りた。

ようやくホテルから抜け出した瞬間、朝霧和音の両足から力が抜け、危うくその場に膝から崩れ落ちそうになった。

振り返っても追ってくる者はなく、彼女はようやく安堵のため息をついた。

ただ、逃げ出したはいいものの、次にどこへ行けばいいのか、彼女には皆目見当がつかなかった。

朝霧和音は隅に隠れてしばらく息を整え、A市の華やかな夜景の下を行き交う人々を眺めなが...

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